バブルが崩壊して、日本の経済は一向に回復せず当時は”失われた10年”と呼ばれていた(不景気はさらに続いたが。。)
そんな時世に就職求人はなかなか見つかるはずもなく、
私は現場の仕事を探すことにした。いわゆるガテン系だ。
電気関係の仕事を主に探した。
なぜだろう?電気関係で惨敗したのに。
これまでを振り返ってみたときに、前職での経験はやはり悔しかった。
そこで本格的に電気の技術・知識を磨きたいと思う気持ちになっていたのだ。
それでも、なかなかいい求人は見つからなかった。
そんな中、妻がたまたま見つけた求人広告に目がとまった。
電気工事の会社だ。
都内のデパート、テナントなどを対象に幅広く活動しているようだ。
早速面接へと向かう。今度は家の近くというわけにはいかないが。
採用の条件が告げられた。
1.高所が大丈夫なこと
2.2週間程度、家を空けても大丈夫なこと
私は、高い所は苦手ではないし、2週間くらい家を空けても大丈夫だ。
私は特に妻に相談することなく即答する。
「即採用」パチパチパチ!!
。。。。。。
「聞いてないよ!!」
「こんな高いところで作業するなんて!!」
その会社の最近の主業務は、携帯電話基地局のアンテナ敷設だった。
まだ、携帯電話が普及し始めた頃だ。
私の最初の仕事はまさかの50mの鉄塔の上。
それもさらに山の上の。。
高いところは大丈夫とは言ったが、いつ足を滑らせてもおかしくなさそうな細い骨組みの鉄塔の上。
いや、さすがに怖い。
上にいるだけで怖いのに、そこでさらに作業しなければならないのだ。
胴綱という安全帯を付けるのだが、どうしてもその胴綱が信用できない。
身を任せることができないのだ。
もしこの胴綱が外れたり切れたりすれば、50m下へまっしぐらだ。
どうしても両手離しできず、片方の手でしっかりと鉄柱を握ってしまう。
地上では無かった風もビュービューと吹いているのだ。
まさに手に汗握る状態。
駄目だ、これでは作業できない。頑張れ自分。
こんな私に現場の連中の目は冷たかった。
本当にここでやっていけるのだろうか。